ニュース

説教浄瑠璃せっきょうじょうるり楽譜集(3)「佐渡の日朗」が
 説経浄瑠璃 若松会から刊行されました。2023.3

  
初代若松若太夫(1874~1948)

三代目 若松若太夫氏からご依頼を受けて始めた楽譜集作りは、今回で3冊目となりました。採譜に用いた音源は、初代若松若太夫氏(1874~1948)が昭和6年に録音したSP盤「佐渡の日朗」キングレコード2枚組です。明治6年生まれの初代が56歳、円熟期の演奏です

続きを読む

 「佐渡の日朗」吹き込みの背景
初代の演奏活動にふれますと、レコード吹き込みは大正2年から昭和7年まで続き、その枚数は70枚余になります。レコード吹き込みと並行して大正5年に帝国劇場で開催された若松会第一回公演を皮切りに、各地の演奏会が開催されています。また、ラジオ放送開始の大正14年から昭和13年まで、説経節をラジオ放送で全国に届けています。
初代の日記を読み解いた当代の話から、この吹き込みに際して毎日熱心に稽古と研究を重ね、万全を期して録音に臨んだ初代の姿が浮かんできました。その内容は、節の作曲から詞章や台本の手直し、ひいては演奏時間を短縮してレコード片面分の3分前後に収めることまで多岐に及びます。
説経節の演奏は、公演などでは聴衆の反応や奏者のノリで臨機応変に演奏して毎回同じにならないことが常ですが、このレコードは初代が細部まで考え抜いて手を決めた、完成度の高い演奏になっています。

 「佐渡の日朗」の音楽性
音楽用語でテンポ・ルバートという演奏記号があります。イタリア語の直訳は「盗まれた速度」という意味で、楽曲中の特定の音やフレーズ内のテンポを自由に変化しながら演奏し、感情を自由に表現できることが特徴です。初代の演奏の根底にもテンポ・ルバートの発想があり、弾き語りという芸態がこの自由な表現を後押ししていることが分かりました。
初代は70枚ものレコード制作過程でレコード会社の企画に応じられる力を付け、今でいうスタジオミュージジャン的なセンスを磨いていきました。併せてこの時期に、文化人の後援者や聴衆の期待に応えられる、より洗練された芸術性を説経節に取り入れた思われます。
以上採譜を通して、楽譜から読み取れた「佐渡の日朗」の音楽性について述べました

このたびの採譜にあたり、当代には曲節名の指定や指使いなど、全体を通して丁寧にご指導いただきました。
五線譜と三味線の楽譜を併記するにあたり、画像処理とスコアレイアウトを私の主催する津軽三味線澤田流 勝玲会門下の華岡陽子氏(澤田玲華)にお願いしました。

P15 p20
   ※クリックすると楽譜サンプルがご覧になれます。

--------------------------------

◇『 説教浄瑠璃せっきょうじょうるり楽譜集(2)初代 若松若太夫』が
 説経浄瑠璃 若松会から刊行されました。2022.3

    

昨年に引き続き説経浄瑠璃 若松会の三代目 若松若太夫氏からご依頼を受け『説教浄瑠璃楽譜集(2)』が完成しました。楽譜集は明治7年生まれの初代(1874~1948)の演奏から「佐倉宗五郎」を選び忠実に採譜を行いました。語り(五線譜)に対応した三味線(文化譜)を二段譜で表し、当代の若松若太夫氏の解説を含めて全40ページの楽譜になりました。

続きを読む

 採譜を終えて 「佐倉宗五郎」の音源は昭和3年のレコードで、約90年前の初代の演奏に接することになりました。当時の録音が「語り」中心であったため、三味線の音が鮮明でなく、三味線の採譜には長い時間を費やしました。僅か2小節の採譜に数日を要したこともありましたが、時間をかけて聴いていくうちに、シンコペーションを用いた力強い音色や、語りの合間を縫うように弾く速弾きの三味線に魅了されました。これらの技は、当代の演奏に引き継がれていることが採譜集(1)を見ると分かります。

   
初代若松若太夫(1874~1948)  初代若松若太夫SPレコード

 若松若太夫の芸 初代は恵まれた声で節を回し、三味線をつけて弾き語りの芸を極めています。家では台本の手直しや三味線奏法の研究、ラジオ放送などに合わせた演奏時間の調節などに費やし、今でいうスタジオミュージジャン的なセンスも持っていました。また日中戦時下には、ジュラルミンの三味線を鋳型で作成して機関銃の音や飛行機の爆音も作り、軍国調の説経節を語ることもあったそうです。
 一方で、政財界・文化人からの後援を受け、大正5年の帝国劇場を初めとして、明治座や丸の内有楽座などの公演やレコード録音、ラジオ放送で活躍しています。この時期に時代の波に乗り、あらゆるニーズにこたえられる洗練されたものも身に着けていきました。

 稽古の方法 この楽譜集は、説経節の練習としては少し難しいかもしれませんが、まずは語りからマスターしてみてください。そしてその間に三味線を入れていきますが、簡単な手から入って下さい。そしてお気に入りの三味線の手(フレーズ)を見つけて、じっくりと稽古するのがいいでしょう。初代は、現在でも通じる乗りの良いフレーズをいくつも生み出しています。

当代の若松若太夫氏から曲節名の指定や指使いなど、全体を通して丁寧にご指導いただき楽譜集が完成しました。またこのような機会を与えていただいたことに感謝いたします。
昨年に引き続き、五線譜と文化譜の併記は、勝玲会門下の華岡陽子(名取 澤田玲華)氏に画像処理とスコアレイアウトをお願いして実現しました。
楽譜集(1)(2)はご希望があれば実費にて頒布します。詳細は若松若太夫公式ウェブサイト<http://sekkyou.s371.xrea.com/>をご覧ください。

P16 p17
   ※クリックすると楽譜サンプルがご覧になれます。

--------------------------------

◇『越ケ谷秋まつり調査概報1』が発刊されました。2022.5

3月に越谷市教育委員会から『越ケ谷秋まつり調査概報1』(作成:さいたま民俗文化研究所)が発刊されました。このうち越谷の木遣(きやり)歌を担当いたしました。木遣歌を伝承している鳶職からの聞き取りとり調査では、町内鳶やお出入りなど興味深い話を聞くことができました。また、楽譜資料として活用していただくために、木遣の歌いだしに必ず歌われる「遣声」を採譜しました。

      

続きを読む

 越谷の木遣歌 越谷の木遣歌は鳶(とび)職人によって建築関係の祝儀歌として、棟上げ祝儀や宴席で歌い継がれてきました。現在では越ケ谷秋まつりの久伊豆神社神輿行列の練り歌や山車の曳き歌としても市民にも広く歌われています。
伝承されている越谷の木遣歌は、江戸の鳶職人たちが仕事歌の地形木遣を祝儀の席で歌うようになった流れをくみます。

 コール&レスポンス 越谷の木遣歌は越谷市無形文化財に指定されています。「遣声(やりごえ)」「手(て)古(こ)」「つりかけ」は、久伊豆神社秋祭りの練歌や山車の曳き歌として伝承されています。指揮をとる木遣師が「よーい やりょお」と呼びかけると、側が歌を受けて歌い継ぎます。
ジャズやゴスペルソングのようなコール&レスポンスの形式です。

 町内鳶 町場の八ケ町には「町内鳶」と呼ばれる町内お抱えの鳶頭がいました。当時の鳶職の職分は幅広く、建築物の基礎工事や土木関連、足場組、構造材の組み上げ、作業小屋作り、仮屋根作り、このほかに祭りの準備から片付けまで多種でした。町内鳶は町内の仕事を一手に請け負う世話人も兼ねていて、町の人は家の雨漏りや雑事が出ると町内鳶に声をかけた。町内鳶はすぐにやって来て、ほかの職人が必要な時は手配をしました。

 木遣師 町内鳶は久伊豆神社の秋まつりにも深く関わり、祭りでの木遣の披露のみならず、祭り前の準備から山車の組み立てや山車の曳き回しにも携わります。木遣師でもある鳶頭は木遣が歌えないと仕事や宴席が務まらず、棟上げ祝儀での木遣の披露は必須であるといわれます。

 覚帳 越谷は明治七年と三二年の大火で多くの資料を失い、あわせて木遣は口頭伝承であったことから、木遣の伝承についての資料はほとんど残されていません。 新石一丁目で鳶職を営んできた島根家では、明治四一年(一九〇八)生れの島根茂氏が木遣文句を書き留めた「覚帳」五冊を保管しています。曲目を見ると、現在では歌われていない曲が多く収められ、木遣歌の貴重な記録といえます。今回はこの資料を載せることができました。覚帳を書き留めた島根茂氏は、当時15歳ですが立派な跡継ぎで、墨書された文字や挿絵を見ても分かります。

  木遣歌   覚帳

--------------------------------

◇YouTubeチャンネル始めました。2021.4

『玲 チャンネル』チャンネル登録お願いします。

--------------------------------

◇『 説教浄瑠璃せっきょうじょうるり楽譜集(1)』が発行されました。2021.3

    

3月に説教浄瑠璃せっきょうじょうるり若松会から『 説経浄瑠璃楽譜集(1)』が発行されました。会主の説経節若松派家元 若松若太夫わかまつ わかたゆうの伝承する説経節は、語りながら三味線を弾く「語りもの」の芸風を継承し、東京都指定無形文化財(芸能)及び板橋区登録無形文化財に認定されています。


当代手製の毛筆書きの台本「御祝儀宝の入船」
―語りの言葉に曲節の印しを朱墨で振った従来の台本―

続きを読む

当代の「従来の伝習方法を踏まえつつ時代に則した教則本を作って後継者を育成したい」との思いを受けて、説経節の採譜と入門書を兼ねた楽譜を作成しました。説経節は自由な旋律とリズムが特徴で魅力でもありますが反面、習得が難しいと思われています。今回はどなたにも分かりやすい楽譜を目標にして、当代と聞き取りを重ねて「曲の骨組み」を採用しました。
楽譜は、五線譜と文化譜を用いて横書二段で作成し、従来の縦書きの台本では表せなかった「語りに対応する三味線を弾く場所」が一目で分かるようになっています。楽譜を開くと語りと三味線を同時に練習することができます。学校教育や伝承教室などの場で幅広くご活用いただければ幸いです。
難関でした五線譜と文化譜の併記は、勝玲会門下の華岡陽子(澤田玲華)氏に画像処理とスコアレイアウトをお願いして実現しました。
詳細は若松若太夫公式ウェブサイト<http://sekkyou.s371.xrea.com/>をご覧ください。

P9 p11 p22 p34
   ※それぞれをクリックすると楽譜サンプルがご覧になれます。

●豆知識
近世邦楽の三味線音楽は、大きく「歌いもの」と「語りもの」の2つの系統に分けることができます。歌いものは地歌や長唄、端唄、小唄などで、音楽の旋律やリズムなどが重視されています。
語りもの代表は義太夫節で、常磐津節や清元節、一中節、新内節なども系統です。説経節は、歌詞や物語を伝えることを重視して、三味線に乗せて世の哀切を語ります。「さんせう太夫」「小栗判官」「葛の葉」「石童丸」などの演目が知られています。

--------------------------------

◇オンラインレッスンやっています。2021.2

コロナ禍、状況に応じてオンラインレッスンも積極的に行っています。
普段は個人レッスンですが、オンラインで合奏も…。

--------------------------------

◇オンラインレッスンを始めました。2020.5

--------------------------------

◇「叙情歌・愛唱歌 CD付き 三味線曲集1」
 完成しました!2014

楽しい三味線!

「三味線」というと、一般的には我が国の伝統的な楽器で一部の人のものという印象がありませんか。確かに、三味線は太鼓や尺八などとともに伝統芸能や民俗芸能に欠くことのできない楽器でありながら、日常的に誰もが慣れ親しむ楽器ではなかったと言えましょう。
 学校教育においても、永く西洋音楽中心の教育が行われ、子どもたちも三味線をはじめとする和楽器に触れる機会が少なかったことも事実です。
 こうした反省の中から、今、三味線を見直そう!三味線音楽を楽しもう!という機運が高まりつつあります。しかし、それには初心者の方でも気軽に三味線演奏が楽しめる演奏法の環境整備が急務であると考えます。
 そこで筆者は、三味線の特徴的奏法や指運びを取り入れながら編曲を試みた「叙情歌・愛唱歌三味線曲集」を考えてみました。曲目は民謡に限らずポピュラーソングなども取り入れ、誰にも親しめるよう心がけました。
曲集の内容は次のとおりです。

なお、練習で活用していただくための、二部合奏とパート別のCD資料を作成しました。
ご希望の方には販売いたしますので、こちらからお問い合わせください。
さあレッスンを始めましょう!

  • ♪ 花は咲く
      ・三味線譜(三味線1)
      ・三味線譜(三味線2)
      ・五線譜スコア
  • ♪ 竹田の子守歌
      三味線譜(三味線1)
      三味線譜(三味線2)
      五線譜スコア
  • ♪ 涙そうそう
      ・三味線譜(三味線1)
      ・三味線譜(三味線2)
      ・五線譜スコア
  • ※竹田の子守唄は
      譜面サンプルを見ることができます。

叙情歌・愛唱歌三味線曲集1譜面

      ♪花は咲く
       花は咲く三味線1
       花は咲く三味線2
      ♪竹田の子守歌
       竹田の子守歌三味線1
       竹田の子守歌三味線2
      ♪涙そうそう
       涙そうそう三味線1
       涙そうそう三味線2
    ※再生ボタンをクリックすると、
    サンプルを視聴できます。

叙情歌・愛唱歌三味線曲集1 cd